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カツラの葉っぱ 大好き!

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街路樹ベストテン

「街路樹デザイン新時代」という本を図書館で借りたが、その中の「街路樹の樹種論議」が興味深いので一部を紹介します。
歌謡曲でも歌われた「銀座のヤナギ」からスタートとした日本の街路樹は、どう変わったのでしょうね。

p56~59
 強度の剪定のため、みにくい樹形となるヤナギが多く見られるようになり、明治時代中期に樹種についての論議が活発に行われます。

 東京市の技師、長岡安平は「東京市の街路樹は、明治13年頃からヤナギが圧倒的に多く、サクラ、カエデがそれについでいる。この三種の木は街路樹には向かない。ヤナギは枝葉が下がって通行に支障があり、葉が小さく緑陰に乏しい。サクラは花どきに1週間ほど目を喜ばせはするが、肝心の緑陰が必要なときに病気になりやすい。また害虫がつき、虫が落ちて通行人がいやがる。カエデも葉が小さく感心しない」と述べています。
 そして、街路樹を選定する要件として、1.気候・地質に合っている、2.早く芽を出し、落葉が遅い、3.ほこりなどに耐える、4.虫害が少ない、5.成長がはやい、6.葉が大きい、7.夜間に悪臭を出さない、などの点を挙げています。それらに合う樹種として、トチノキ、モミジ、センダン、ナンテンギリ、アカメガシワ、トネリコ、エンジュ、カシワ、キササゲ、ホウノキ、アオギリ、ボダイジュ、クヌギ、ケヤキ、ナラなどを挙げています。在来種へのつよい選好がみられます。

 一方、林業試験所長の白沢保美と新宿御苑長の福羽逸人は、東京市から調査依頼をうけ、報告書を「東京市行道樹改良按」(明治40)としてまとめています。そこでは、スズカケノキ、ユリノキ、ポプラ類、イチョウ、トウカエデ、トチノキ、エンジュ、アオギリ、ボダイジュなど、外来種を多く選んでいます。建物との調和など、景観を重視した結果といわれます。

 この“改良按”をもとに、長岡らがさらに検討し、イチョウ、スズカケノキ、ユリノキ、アオギリ、トウカエデ、エンジュ、トチノキ、ミズキ、トネリコ、アカメガシワの10種を決定し、苗木の育成にとりかかります。“改良按”からポプラ類が除かれ、ミズキ、トネリコ、アカメガシワなどが加えられます。しかし、あとでつけ加えられた在来種のミズキなどの生育は芳しくなく、結局、育成段階でとり除かれてしまいます。
 以後、これらの樹種が、街路樹として多く用いられるようになります。そして、一つの区域・一つの路線では、同一樹種のものを同じ形に仕立て、等間隔で植える方式が定着していきます。少数樹種による整形的植栽で、わが国の街路樹植栽における古典的な方式といえます。なお、銀座道りと交差する街路では、アオギリ、トウカエデ、エンジュ、ミズキ、トネリコなど、多彩な樹種が導入されています。一方で街路樹によって、通りの個性を出そうとする動きも見られたのです。


つぎに街路樹の樹種について、北から南に見て行きます。

街路樹トレンド図3.16


p76~80
 図3.16は1997年調査における上位20種の街路樹の本数について、1987年から97年の10年間における動きをみたものです。
(一部省略)
 定着性ではイチョウが圧倒的に高く、サクラ類、ケヤキ、トウカエデ、プラタナス類がそれに続いています。常緑樹のクスノキ、果実や花の美しいナナカマド、ハナミズキもかなりの定着度を示しています。
 トレンド性ではケヤキがもっとも高く、ハナミズキ、サクラ類、クスノキ、サザンカがそれに続きます。一方、プラタナス類、ヤナギ類が大きく低下しています。これらの樹種は環境条件の悪いところでも比較的よく育ち、街路樹環境のよくない頃に大いに活躍しましたが、環境が多少なりとも改善されるようになり、また人びとの嗜好も変わり、人気が低下しているものとみられます。

 つぎに、同様な手法により、地方別にその動向を見てみます。
・北海道地方ではナナカマドの定着性が圧倒的に高く、アカエゾマツのトレンド性が高くなっています。寒冷な気候の関係でケヤキは上位20種には入らず、イチョウの定着性もかなり低くなっています。(一部省略)
・東北地方ではイチョウ、ケヤキの定着性が全国並になっています。ナナカマド、サクラ類、ケヤキ、ハナミズキ、ユリノキのトレンド性が高く、花木やお洒落な樹種への選好性がうかがわれます。
・関東地方では全体的に全国の布置パターンとよく似てますが、ハナミズキ、ユリノキの定着性とトレンド性の高い特徴が見られます。
・中部・北陸地方ではトウカエデの定着性が高く、ハナミズキ、トウカエデ、ナンキンハゼのトレンド性が高くなっています。
・近畿地方では常緑のクスノキ、シラカシの定着性が高く、クスノキ、アラカシ、ナンキンハゼのトレンド性が高くなっています。関東地方にくらべて常緑樹が多いのが特徴的です。
・中国地方ではモミジバフウ、プラタナス類、クスノキの定着性が高く、シラカシ、アラカシのトレンド性が高くなっています。
・四国地方では定着性ではクスノキが圧倒的に高くヤマモモ、モミジバフウも高くなっています。トレンド性ではサンゴジュ、クロガネモチ、ナンキンハゼが高くなっています。
・九州・沖縄地方ではサクラ類、ホルトノキ、クロガネモチ、クスノキの定着性が高く、サザンカ、リュウキュウマツ、ケヤキ、テリハボク、フクギのトレンド性が高くなっています。


あれが、あれが二重橋、記念の写真を撮りましょうね~♪

 上京した若かりし頃の大使は、皇居お堀端のヤナギにも、これが都会の街路樹か♪と感激した覚えがあるんです。それが今では・・・・
 ヤナギやスズカケノキ(プラタナス)の人気がすたれ、ケヤキやハナミズキが好まれるという街路樹トレンドの変遷に・・・時代を感じますね。

 さらに、北海道から沖縄までの街路樹を見ると、その樹種の多さに驚くが広い緯度範囲に横たわる日本列島ならではあり、当然といえば当然なんでしょう。
 ちなみに街路樹ベストテンを私が選ぶなら、こうなるのだが・・・・・
ケヤキ、イチョウ、トチノキ、ユリノキ、クスノキ、タイサンボク、カツラ、コブシ、ハナミズキ、ナナカマド・・・・どないや?

「街路樹デザイン新時代」渡辺達三著、掌華房、2000年刊

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